年5日の年次有給休暇の確実な取得について

今年の4月に、年次有給休暇(以下、「年休」という)の取得について、
労働基準法の改正がありました。
 
すべての企業(使用者)において、
年10日以上の年休が付与される社員(労働者)に対して、
年休を付与した日(基準日)から1年以内に5日については、
取得時季を指定して年休を取得させることが義務付けられています。

日本の平成29年の年休の平均取得日数は9.3日、取得率は51.1%でした。
前年の49.4%から1.7ポイントの増加で、
取得率が50%を超えたのは18年ぶりとなりましたが、
世界各国と比較すると依然として低い取得率となっています。

政府は年休の取得率向上を促し、2020年までに取得率70%とするとの数値目標を掲げています。
 
年休の取得方法は、次の3つです。

① 社員自らの請求・取得

年休は、社員があらかじめ請求する時季に取得させます。
ただし、社員が請求した時季に年休を取得させることが事業の正常な運営を妨げる場合は、
他の時季に変更させることがあります。
 
② 年休の計画的付与

計画的付与とは、社員に付与された年休のうち、
5日を超える分について、会社が計画的に、
年休を付与することができる制度のことをいいます。
5日については、社員個人が自由に取得できる日数として、
必ず残しておかなければなりませんが、
5日を超える分については、会社が年休の取得日を決定することができます。

計画的付与には、さまざまな方式がありますが、
事業所全体・部署ごと・社員ごとに付与する等の方式があります。 

計画的付与を行うためには、就業規則に規定し、労使協定を締結する必要があります。
ただし、労使協定については、労基署への届出は不要です。

③ 会社による時季指定(今回の法改正)

会社は、年に10日以上の年休が付与される社員に対し、そのうちの5日について、
毎年時季を指定したうえで取得させなければなりません。
ただし、上記①または②の方法で、5日取得できていれば、
会社による時季指定をする必要はなく、また、することもできません。

要するに、上記①②③のいずれの取得方法でもいいので、
5日の年休を取得できればいいのです。

時季指定に当たっては、社員から時季に関する意見を聴かなければなりません。
また、できる限り社員の希望に沿った時季に取得できるよう、
意見を尊重するよう努めなければなりません。
会社は意見を尊重したうえで、時季を指定します。

会社が時季を指定して年休を取得させるためには、就業規則に規定する必要があります。
時季指定を行うのに就業規則へ記載しない、または、年5日の年休を取得しない社員がいる会社は、
どちらの場合も30万円以下の罰金の対象となりますので、注意しましょう。

社員ごとに年休管理簿の作成と、3年間の保存が義務付けられていますので、
そちらについても対応が必要です。
  
年休の取得の促進については、一方的に会社が年休を取得させると、
トラブルにつながる恐れがあります。
それぞれの会社の実情をもとに、社員と相談のうえ、
会社に適した対応が求められます。
社員が年休を取得することにより、心身の疲労を解消し、リフレッシュを図ることができると、
仕事効率やモチベーションの向上につながるという調査結果も出ています。

社員と会社の双方にとってメリットがあるよう、
今回の「法改正」を踏まえて、効果的な年休の取得方法を取り入れられてはいかがでしょうか。

池田

港区の若い社会保険労務士【汐留社会保険労務士事務所】
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