年を刻む~「年輪経営」

2019年も残すところあと数日となりました。平成最後で令和最初のこの1年はどのような年でしたでしょうか。1年間の悲喜交々を心に刻みながら、除夜の鐘を聴きながらあらたまの年を迎えたいと思います。

さて、2019年最後のブログは、年を刻むにちなんで、「年輪経営」をご紹介させていただきたいと思います。年輪経営は、いたずらに規模拡大を追わずに、樹木が年輪を重ねるように、ゆっくりと永続的な成長を目指す経営の考え方です。長野県の社員約500人の寒天メーカー 伊那食品工業の経営手法として知られています。伊那食品工業は年輪経営で倒産寸前から会社を立て直し、48年連続増収増益を更新中です。また日本の優良企業を紹介する書籍「日本でいちばん大切にしたい会社」でも筆頭に紹介されている「いい会社」です。

伊那食品工業の社是は、「いい会社をつくりましょう~たくましく そして やさしく~」です。これを達成するためのメソッドは、「社員の幸せの実現」です。そこで福利厚生の充実に心を砕いています。取り組みの一例になりますが、長野の冬の寒さ対策には床暖房の設置、会社負担でインフルエンザ予防接種や介護保険・がん保険の加入、全社員旅行、またおやつの提供なども含まれています。福利厚生の充実は社員本人の喜びだけでなく、社員家族の喜びにも波及します。社員の幸せのために経営をすると、自然と社員は気持ちを返してくれる、これが様々な面で好循環を産み、結果として会社の業績アップに連動する。これが伊那食品工業の年輪経営です。以前紹介した「健康経営」の考え方にも通じています。

年輪経営を実践されてこられた堀越最高顧問によると“会社経営において特に奇をてらったことはしておらず、教科書通りに大切なことを大切にしているだけです。”だそうです。そして“社員の幸せのために、あるべき姿を守っても経営はできるということを、伊那食品工業が成長し続けることで証明する”ことが最高顧問の野心だそうです。また年輪経営については、“毎年の成長度合いは同じでなくてもよく、前の年よりも大きくなっていることが大切です。樹木の年輪の幅というのは若い樹木ほど大きく、年数を経るほどに小さくなっていくということが、自然の摂理です。しかし、樹木全体の容積は年々大きくなっているはずなので、成長の絶対量は大きくなっているということも忘れてはいけません。会社経営をしていれば、いいときも悪いときもあります。悪いときでも、少しでも成長を続けることです。むしろ、いいときに、市場の影響を受けて急激に成長してしまうことに気をつけなければいけません。”と語っています。

かつて企業の寿命(繁栄を謳歌できる期間)は30年といわれていましたが、今ではそれがもっと早まり、ITやAI技術などのイノベーションにより企業の淘汰や再編も余儀なくされる時代の潮流の中で終身雇用、年功序列の古き良き日本型雇用を維持しながら、成長を続ける“人にやさしい会社”の経営手法だからこそ、今あらためて注目されているのではないでしょうか。トヨタ自動車やパナソニックなどの大企業もその実践法を参考にしているということにもうなずけます。

私も人の一生にかかわることができる社会保険労務士の仕事を通じて、顧問先との信頼の年輪を刻みながら「いい会社」をつくることの一助になれるよう、一層専心していきたいと思います。

今年も多くの皆様とご縁をいただき、またご縁を育むことができましたことに心より感謝申し上げます。
感謝合掌 Homma:)