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社員が感染したら?復帰はいつから? 新型コロナウィルス感染症対策ガイドをもとに解説!

労務管理

依然として新型コロナウイルス感染症による混乱が続いています。「社員がPCR検査を受けることになった」「社員が濃厚接触者になった」という話だけではなく、「社員が感染した」「感染後の復職のタイミングがわからない」というご相談も多くなりました。2021年5月、日本渡航医学会と日本産業衛生学会は「職域のための新型コロナウィルス感染症対策ガイド」(以下、対策ガイド)を発行しました。本稿ではこの対策ガイドをもとに、社員が感染した場合の対応と復職の手順について解説します。

職域のための新型コロナウィルス感染症対策ガイド 第5版

1.社員が感染したら
2.感染者の業務のフロー
3.復帰のためのステップ
4.職場における対策
5.まとめ

■社員が感染したら

社員は新型コロナウイルス感染症に罹患した時点で、感染症法(感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律)の定めに従うことになり、都道府県知事の通知をもって就業制限を課されます。混同しやすい規定として、労働安全衛生規則では次のように定められています。

労働安全衛生規則 第61条第1項第1号
事業者は、次の各号~省略~のいずれかに該当する者については、その就業を禁止しなければならない

新型コロナウィルス感染症の場合は、労働安全衛生法や労働安全衛生規則ではなく感染症法が優先されます。したがって、会社の意思決定に基づき就業をさせないのではなく、社員自身が感染症法の規定により就業を禁じられることになるのです。
社内で感染者が出た場合は、保健所の指示を受けた上で対応することになります。入院ができない場合、感染者には容体の急変に対応しやすい宿泊療養を勧めます。保健所の指示に時間がかかる場合も考えられるので、あらかじめ迅速な初動対応ができるよう手順を定めておくことが望ましいでしょう社員への対応のほか、消毒についての指示が出される場合もあります。

※「職域のための新型コロナウィルス感染症対策ガイド 第5版」より

また、保健所から消毒の指示がない場合は、以下を参考にして社内の消毒を行います。

※「職域のための新型コロナウィルス感染症対策ガイド 第5版」より

■感染者の業務のフォロー

療養期間は、発症日(無症状の場合は検査日)から10日間が経過、かつ症状軽快日から3日間(72時間)が経過するまで、となっています。そのため、感染者は少なくとも10日以上は業務を離れることになります。回復の状況は予測ができませんので、10日程度で戻ってくると楽観視せず、1ヶ月程度は業務ができないかもしれない、と考えておいた方が安心です。感染の一報は急にやってきます。社内の混乱を最小限に抑えられるよう、普段からこまめな情報共有、業務の分担や可視化を行っておくと安心です。そうすることで、感染者が担当していた業務をスムーズに移行することができます。

■復帰のためのステップ

医師や保健所の指示があれば、いよいよ復帰ということになります。この際、医療機関へ負担のかかる陰性証明書や治癒証明書の請求はできるだけ控えるようにします。

※「職域のための新型コロナウィルス感染症対策ガイド 第5版」より

症状は人それぞれなので、画一的なマニュアルでの対応は難しいと考えておいた方が良いでしょう。復帰が決まったら健康観察も兼ねてオンライン面談や電話面談を行い、社員の体調に合わせて復帰のスケジュールを組んでいくことが望ましいです。

療養期間中、自覚症状が軽微又はほとんど無く、本人にも体力や労働意欲がある場合は、従前と同じ勤務時間での復帰でも差し支えありません。これとは逆に、寝込んで動けない状態が長かったような場合は、いくら本人に労働意欲があっても、まずは半日勤務からスタートするなど、負担のない形で徐々に復帰してもらう方が良いでしょう。1日でも早く療養前の状態に戻ってほしいものですが、健康状態に配慮しながら復帰してもらうのも大切な労務管理です。

復帰にあたり、在宅勤務ができるようであれば利用してもらいます。在宅勤務は移動時間を省くことができますので、通常の出勤に比べ拘束時間も短く、心身への負担が比較的軽くなります。また、どうしてもすぐに出社が必要な場合は、次の対策を行います。

■職場における対策

普段からマスク着用、手洗い励行、消毒など、感染予防の対策をしている会社が多いと思いますが、感染者が出た後に注意すべき点をまとめます。

①環境対策(換気、消毒)

換気が適切に行われているか、改めて確認します。対策ガイドによると、窓の解放による方法と機械換気による方法が示されています。窓の開放による場合は30分に1回以上窓を全開にすること(窓が二方向以上に無い場合はドアを開ける)が推奨されています。機械換気の場合は、空気環境の基準や必要換気量(1人当たり毎時30㎥)が満たされているか確認します。

厚生労働省 空気環境の基準

消毒については、目的に合った製品を選び使用することが注意点として挙げられています。市販の製品は多く出回っていますが、アルコール消毒液は70-95%、次亜塩素酸ナトリウム溶液であれば0.05%以上が基本です。
通常の消毒であれば、不特定多数の人が触るドアノブや手すりなどを、少なくとも1日1回以上行うことが望ましいとされています。このほか、従業員が各自パソコンや机、電話などを消毒することも推奨されています。

②社員の行動変容

ソーシャルディスタンスが適切に保たれる環境になっているか、チェックを行いましょう。オフィスにおける人員の配置は適切か(2m以上の距離を保てているかどうか、対面での業務は適切に制限されているか、エレベーター内での会話は控えられているか)、食堂や休憩室、喫煙室の管理は適切か(食事中の距離を保ち、黙食が行われているか、いわゆる3密の要件がそろう喫煙室を屋外に移動することは検討できるか)などがチェックポイントです。
また、動線の固定化、限定化(執務できるフロアやエリアを限定する、一方通行規制、入り口と出口を分ける等)は接触機会の低減に有効なうえ、感染者が発生した際の行動のトレースにも役立ちます。そこまでの管理が難しい場合でも、同じ部署を2つに分け、在宅勤務を交替で行うスプリットチーム制を導入すると、出勤者を削減することができます。

③ハイリスク者への配慮

重症化のリスク因子を持つハイリスク者に対する配慮も忘れてはなりません。65歳以上の高齢者、高血圧、肥満、喫煙等、リスク因子の中には身近なものも多くあります。また、リスク因子とまでは言われていないものの、妊婦も「評価中の要注意な基礎疾患」の一つに位置付けられています。対策ガイドには以下のような就業配慮の例が示されています。ハイリスク者からの申出を待つだけでなく、会社からも必要な働きかけを行うことで、より良い労使関係を築くことができます。

※「職域のための新型コロナウィルス感染症対策ガイド 第5版」より

勤務先の感染防止対策が不十分だったとして、社員の家族が会社に対して損害賠償を求める、というような事案も発生しています。
会社は社員の安全のためにも、しっかりと感染防止対策に取り組む必要があります。

■まとめ

社内で感染者が出た後の対応ついてご紹介しました。ご紹介した対策以外にも、傷病手当金やその他公的給付金の利用など、療養中の補償についても考える必要があります。
2020年初めからすでに1年半以上、新型コロナウィルス感染症の影響が続いています。2021年9月現在、日本国内における人口10万人当たりの感染者数は累計で1305人に達しています。変異株の出現もあり、感染自体がもはや珍しいことではなくなりました。感染者は必ず出ると考えて、普段からの備えをしておきましょう。

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