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令和3年4月改正!脱退一時金の制度と申請方法をわかりやすく解説

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日本の年金制度は、原則日本国内に住所のあるすべての人が加入を義務付けられており、働き方によって、厚生年金もしくは国民年金に加入することになります。それは、日本国籍を有していない外国人の方々であっても同様です。日本国籍を有しない方が、国民年金、厚生年金保険の被保険者資格を喪失して日本を出国した場合、日本に住所を有しなくなった日から2年以内に脱退一時金を請求することができます。
外国人労働者の採用が増加し、国籍の多様化が広まる中、厚生年金保険加入者が受け取ることができる脱退一時金について解説いたします。

1.厚生年金保険の脱退一時金の支給要件
2.脱退一時金の支給額
3.脱退一時金受給のための手続き
4.申請書類提出後の流れ
5.FAQ
6.まとめ

※汐留社会保険労務士法人YouTube動画でも解説しています。ご視聴くださいませ。

【YouTube】令和3年4月以降の脱退一時金の改正について 

■厚生年金保険の脱退一時金の支給要件

厚生年金保険の脱退一時金の支給要件は7つあります。

①日本国籍を有していない

②公的年金制度(厚生年金保険または国民年金)の被保険者でない
日本国内に住所を有しない場合でも、厚生年金保険の被保険者の要件を満たす場合は、対象外となります。
海外居住の外国人リモートワーカーを雇った際の社会保険・労働保険の扱いに関して

③厚生年金保険(共済組合等を含む)の加入期間の合計が6月以上ある

④老齢年金の受給資格期間(10年間)を満たしていない

⑤障害厚生年金(障害手当金を含む)等の年金を受ける権利を有したことがない

⑥日本国内に住所を有していない

⑦公的年金制度の被保険者資格を喪失した日から2年以上経過していない
(資格喪失日に日本国内に住所を有していた場合は、同日後に初めて、日本国内に住所を有しなくなった日から2年以上経過していない) 

■脱退一時金の支給額

厚生年金保険の脱退一時金の支給額は次の計算式により決まります。

厚生年金保険の被保険者であった期間の平均標準報酬額 × 支給率(保険料率×2分の1×支給率計算に用いる数)

被保険者であった期間の平均標準報酬額とは、以下のAとBを合算した額を全体の被保険者期間の月数で除して得た額をいいます。

A 平成15年4月より前の被保険者期間の標準報酬月額に1.3を乗じた額
B 平成15年4月以後の被保険者期間の標準報酬月額および標準賞与額を合算した額

支給率とは、最終月(資格喪失した日の属する月の前月)の属する年の前年10月の保険料率(最終月が1月~8月であれば、前々年10月の保険料率)に2分の1を乗じた率に、被保険者期間の区分に応じた支給率計算に用いる数を乗じたものをいいます。
令和3年4月より、最終月(資格喪失した日の属する月の前月)が令和3年4月以降の方については、支給額計算に用いる月数の上限が36月(3年)から60月(5年)に引き上げられました。
なお、最終月が令和3年3月以前の場合は、これまで通り36月(3年)を上限として支給額が計算されます。

■脱退一時受給のための手続き

脱退一時金の手続きは、日本に住所を有しなくなった日から2年以内に請求する必要があります。
脱退一時金の請求は、次の書類を用意して年金事務所に請求します。 

【出国前準備】

①「転出届」を提出する。
国内居住地の市区町村へ「転出届」を出しましょう。「転出届」は出国の14日前から提出が可能です。

②「住民票の除票の写し」の取得する。
「転出届」提出の翌日から、「住民票の除票の写し」を取得することが可能です。脱退一時金の請求の際に「住民票の除票の写し」を添付した方が、審査がスムーズになりますので取得されるのをお勧めします。

【用意する書類】

請求者(本人または代理人)は、脱退一時金請求書および次の添付書類を用意し、年金事務所へ提出します。

・パスポートの写し(氏名、生年月日、国籍、署名、在留資格が確認できるページ)
・「銀行名」「支店名」「支店所在地」「口座番号」「請求者本人の口座名義であること」が分かる書類
・年金手帳その他基礎年金番号が分かる書類
・委任状

代理人が請求手続きを行う場合は委任状が必要です。委任状は原本が必要となります。

■申請書類提出後の流れ

年金事務所に書類が受理されてから審査が完了するまで、おおむね4~6月程度かかります。書類に不備がある場合は、さらに審査に時間がかかります。
審査が完了すると、脱退一時金請求書に記載した口座に、脱退一時金が振り込まれます。入金と同時に、「脱退一時金支給決定通知書」が送付されます。
「脱退一時金支給決定通知書」は脱退一時金請求書の記載住所に郵送されますので、請求後に転居される予定のある方は、注意が必要です。
脱退一時金はその支給の際に、20.42%の税金が源泉徴収されますが、後日、確定申告をすることで還付を受けられる場合があります。
その際に、「脱退一時金支給決定通知書」が必要になりますので、なくさないようにしてください。

■FAQ

Q:振込口座の添付書類は何を用意すればいいですか。

A:口座確認の添付資料は通帳の見開きページの写し等で構いません。ただし、ゆうちょ銀行は不可になります。また、海外口座でも問題ございませんが、その場合はどこに口座名義や番号等が書かれているか分かるように日本語でのメモ書きをしておきましょう。また、海外口座の場合は為替手数料が引かれた金額で入金されます。

Q:脱退一時金の支払い通貨は何ですか。

A:脱退一時金は、ドルやユーロ等の外国の通貨で支払われます。国によって対応通貨が異なりますので年金事務所のホームページ等で確認しましょう。例えば、ベトナムの場合は、ドルでの支払いになりますので、入金される口座がドル口座に対応されているかご自身で確認する必要があります。

■まとめ

厚生年金保険の脱退一時金について解説いたしました。ご自身で手続きされる場合は、出国後に年金事務所へ書類が届くように、空港のポスト等へ書類を投函されているケースが多いようです。以前は、出国後でないと請求が出来ませんでしたが、平成29年から転出届を市区町村に提出すれば住民票転出予定日以降に日本国内での脱退一時金の請求も可能となっています。汐留社会保険労務士法人では脱退一時金の請求のサポートを承っておりますので、お気軽にお問い合わせくださいませ。

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