【社労士解説】2026年度の最低賃金、全国加重平均1,177円へ ── 発効日までに確認したい規程の点検ポイント
「月給制の社員は、最低賃金とは関係ないと考えていたのですが、本当に大丈夫でしょうか」。人事のご担当者様から、この時期によくお聞きするご質問です。2026年度の地域別最低賃金は、全国加重平均で56円引き上げられて1,177円となり、引上げ額は目安制度が始まった昭和53年度以降で2番目の高さとなりました(出典:厚生労働省「全ての都道府県で地域別最低賃金の改定額が答申されました」)。本稿では、今回の改定のポイントと、発効日までに確認したい規程の点検ポイントを解説します。
2.月給の方も時間額に換算して確認する
3.規程で見直したい3つのポイント
4.発効日と給与計算の締め日にも気をつける
5.まとめ
■2026年度の最低賃金改定のポイント
今回の改定では、すべての都道府県で54円から65円の引上げとなりました。最も高い東京都は1,280円、最も低い宮崎県は1,085円です。
発効日は都道府県ごとに異なり、10月1日から12月2日にかけて順次発効される予定です。東京都や大阪府などは10月1日に発効しましたが、11月や12月に発効する地域もあります。複数の都道府県に事業場がある企業では、事業場ごとに適用される金額と発効日を確認しておきましょう。
なお、最低賃金1,500円目標の達成時期をめぐる政府の方針については、過去のコラム「【社労士解説】最低賃金1,500円達成は「2030年代前半」に後ろ倒しへ ── 骨太の方針2026(原案)から読む労働時間制度改革の行方」でも取り上げていますので、あわせてご覧ください。
【社労士解説】最低賃金1,500円達成は「2030年代前半」に後ろ倒しへ ── 骨太の方針2026(原案)から読む労働時間制度改革の行方
■月給の方も時間額に換算して確認する
最低賃金は時間額で定められていますが、月給制や日給制の方にも適用されます。月給制の場合は、月給を1か月平均所定労働時間で割った金額が、最低賃金額以上であるかを確認します。
このとき、時間外・休日・深夜の割増賃金、精皆勤手当、通勤手当、家族手当は計算から除きます(出典:厚生労働省「あなたの賃金を比較チェック|最低賃金制度」)。たとえば東京都で1か月平均所定労働時間が160時間の場合、対象となる賃金が月204,800円に届いていなければ、最低賃金を下回ってしまうことになります。
■規程で見直したい3つのポイント
まず第一に、賃金テーブルや初任給の下限です。等級ごとの基本給の下限や、パート・アルバイトの時給の下限が、改定後の最低賃金を下回っていないかを確認しましょう。
そして次に、固定残業代を含む月給です。固定残業代は最低賃金の計算に含まれないため、総額では十分に見えても、基本給と手当だけでは不足していることがあります。
最後に、賃金差の縮小です。パート・アルバイトの時給だけを引き上げると、正社員の初任給や一つ上の等級との差が小さくなり、待遇の違いを説明しにくくなってしまいます。等級間のバランスもあわせて見直すことが望ましいと考えられます。
■発効日と給与計算の締め日にも気をつける
最低賃金は、発効日以降に働いた分から適用されます。給与計算の締め日が月の途中にある場合は、同じ計算期間の中で改定前と改定後の金額が混在することになるため、給与計算システムで単価を切り替える日を確認しておきましょう。派遣労働者については、派遣先の事業場に適用される最低賃金が基準となります。
なお、まだ発効していない地域では、発効日の前に事業場内最低賃金を引き上げ、生産性向上のための設備投資等を行う中小企業・小規模事業者が、業務改善助成金を利用できる場合があります。申請期限は発効日の前日または11月30日のいずれか早い日で、10月1日に発効した地域ではすでに受付が終了しています(出典:厚生労働省「業務改善助成金」)。
■まとめ
今回の改定は引上げ幅が大きく、時給制のパート・アルバイトだけでなく、月給制の社員や賃金テーブル全体に影響が及ぶことが考えられます。発効日を過ぎてから不足に気づくと、差額の精算が必要になってしまいます。毎年の改定を見据えて、賃金規程の点検を定例の業務に組み込んでおきましょう。
汐留社会保険労務士法人では、最低賃金への対応状況の確認から、賃金規程・就業規則の見直し、賃金テーブルの再設計、給与計算まで、一貫してサポートしています。自社の対応に不安をお持ちのご担当者様は、ぜひ一度ご相談ください。