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【社労士解説】2026年10月公表「令和8年版 過労死等防止対策白書」 ── 長時間労働の減少と労災請求の増加から考える企業の対策

「残業時間はかなり減ってきたのに、体調を崩す社員が減らないのはなぜでしょうか」。人事のご担当者様から、最近よくお聞きするご質問です。2026年10月9日、政府は「令和8年版 過労死等防止対策白書」を閣議決定し公表しました(出典:厚生労働省「「令和8年版 過労死等防止対策白書」を公表します」)。今回の白書では、過労死等の労災請求件数が増えている要因についての分析が示されています。本稿では、白書のポイントと、企業が見直したい対策を解説します。

1.令和8年版白書の位置づけと主な数値
2.長時間労働が減っても脳・心臓疾患の請求が増える理由
3.精神障害の請求で伸びている「人間関係のトラブル」
4.企業が見直したい3つの対策
5.まとめ

■令和8年版白書の位置づけと主な数値

過労死等防止対策白書は、過労死等防止対策推進法に基づいて毎年国会に報告される年次報告書です。
週の労働時間が40時間以上の雇用者のうち、週60時間以上働く方の割合は7.7%で、長期的に減少しています。一方で、終業から次の始業までに一定の休息時間を設ける勤務間インターバル制度を導入している企業は6.9%、労働者数50人未満の小規模事業場でストレスチェックを実施している割合は32.5%にとどまり、いずれも過労死等防止対策大綱の目標(15%、50%)にはまだ届いていない状態です(出典:厚生労働省「令和8年版過労死等防止対策白書(概要版)」)。

■長時間労働が減っても脳・心臓疾患の請求が増える理由

白書では、週60時間以上働く雇用者数が減っている一方で、脳・心臓疾患の労災請求件数は増加傾向にあると指摘しています。年齢階層別にみると、令和7年度の請求件数(死亡以外)は50歳代が383件、60歳以上が347件と、ほかの年齢層を大きく上回っています。白書は、発症しやすい50歳以上の層の請求が増えたことが、全体の増加の主な原因と考えられるとしています(出典:厚生労働省「令和8年版過労死等防止対策白書(概要版)」)。
また、時間外労働が月80時間未満の事案の支給決定件数も、緩やかな増加傾向にあります。高年齢の社員が増えるなかでは、労働時間が過労死ラインを下回っていても、健康管理を緩めることはできないといえます。

■精神障害の請求で伸びている「人間関係のトラブル」

精神障害の労災決定件数を出来事の類型別にみると、「対人関係」の伸びが最も大きく、平成26年度の438件から令和7年度には1,759件に増えています。なかでも伸びが大きいのが「上司とのトラブル」です。業種別では「医療、福祉」の請求件数が最も多くなっています(出典:厚生労働省「令和8年版過労死等防止対策白書(概要版)」)。

なお、令和7年度の過労死等の労災補償状況については、過去のコラム「【社労士解説】過労死等の労災請求が過去最多6,212件 ── 令和7年度「過労死等の労災補償状況」に見る過重労働・メンタルヘルス対策のポイント」でも取り上げていますので、あわせてご覧ください。

【社労士解説】過労死等の労災請求が過去最多6,212件 ── 令和7年度「過労死等の労災補償状況」に見る過重労働・メンタルヘルス対策のポイント

■企業が見直したい3つの対策

まず第一に、50歳以上の社員の健康管理です。定期健康診断の結果に基づく医師の意見聴取や就業上の措置を、労働時間の長短にかかわらず確実に行いましょう。
そして次に、管理職への教育です。パワーハラスメントにあたらない場合でも、上司との関係のこじれは大きな心理的負荷になってしまいます。部下との面談の進め方や、相談を受けたときの対応を、管理職研修で取り上げることが望ましいと考えられます。
最後に、制度の整備です。勤務間インターバル制度を就業規則に定めるとともに、2028年4月に予定されている労働者数50人未満の事業場へのストレスチェックの義務化に向けて、実施体制を早めに検討しておきましょう。

■まとめ

令和8年版白書からは、長時間労働の削減に加えて、年齢構成の変化や職場の人間関係にも目を向けた対策が必要であることがうかがえます。健康管理とハラスメント対策を組み合わせて進めていくことが求められます。11月は「過労死等防止啓発月間」です。この機会に、自社の取組みを点検してみてはいかがでしょうか。
汐留社会保険労務士法人では、勤務間インターバル制度の就業規則への規定から、ストレスチェックの実施体制づくり、管理職向けのハラスメント研修まで、健康経営の取組みを一貫してサポートしています。自社の対応に不安をお持ちのご担当者様は、ぜひ一度ご相談ください。
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