【社労士解説】2026年10月「106万円の壁」撤廃 ── 週20時間を基準にしたパート・アルバイトの労務管理
「106万円を超えないようにシフトを組んでいるパートさんがいますが、10月からはどうすればよいのでしょうか」。
人事のご担当者様から、最近よくお聞きするご質問です。厚生労働省の調査によると、配偶者のいるパートタイムの女性のうち、過去1年間に年収や労働時間を調整する「就業調整」をしていた方は21.8%でした(出典:厚生労働省「令和3年パートタイム・有期雇用労働者総合実態調査」)。2026年10月から、社会保険の加入要件のうち、いわゆる「106万円の壁」と呼ばれてきた賃金要件が撤廃されます。本稿では、今回の改正で変わる点と労務管理のポイントを解説します。
2.これからの基準は「週20時間」
3.見落とされやすい「所定」と「実態」のずれ
4.今から着手したい3つの実務
5.まとめ
■ 撤廃される「賃金要件」とは
短時間労働者が社会保険(健康保険・厚生年金保険)に加入するには、これまで
- 週の所定労働時間20時間以上
- 月額賃金8.8万円以上(賃金要件)
- 従業員数51人以上の企業(企業規模要件)
- 学生でないこと
の4つを満たす必要がありました。
令和7年の年金制度改正法に基づき、全国の最低賃金が1,016円以上となったことを踏まえて、2026年10月にこの賃金要件が撤廃されます(出典:厚生労働省「厚生労働省関係の主な制度変更(令和8年10月)について」)。企業規模要件も2027年10月の「36人以上」から段階的に縮小され、2035年10月には撤廃されます。
■ これからの基準は「週20時間」
最低賃金1,016円以上の地域では、週20時間働けば月額8.8万円以上となります。今回の撤廃により、加入の判断は週の所定労働時間が20時間以上かどうかに一本化されることになります。
つまり、「年収を106万円未満に抑えているから加入しなくてよい」という考え方は通用しなくなってしまいます。雇用契約で定めた労働時間で判断するという点を、現場の管理者とも共有しておきましょう。
■見落とされやすい「所定」と「実態」のずれ
厚生労働省は、週の所定労働時間が20時間未満であれば、残業等により一時的に週20時間以上となっても加入対象にはならない一方、週20時間以上で働く状況が2か月を超えて続くようであれば、加入対象となることがあると示しています(出典:厚生労働省「社会保険の加入対象の拡大について」)。
契約上は週19時間でも、人手不足を理由にシフトが恒常的に延びていれば、加入漏れのリスクを抱えてしまうことになります。
なお、パートタイム・有期雇用労働者の労働条件明示のルールについては、過去のコラム「【社労士解説】2026年10月改正「同一労働同一賃金」── 必要となる労働条件明示書の見直しと待遇差説明義務」でも取り上げていますので、あわせてご覧ください。
■ 今から着手したい3つの実務
まず第一に、対象者の洗い出しです。賃金要件により加入していなかった週20時間以上の方を確認し、被保険者資格取得届の提出漏れを防ぎましょう。
そして次に、雇用契約書と勤怠実績の突合です。所定労働時間と実際の勤務時間に継続的なずれがないかを点検し、必要に応じて契約を見直します。
最後に、本人への丁寧な説明です。同調査では、就業調整をしている配偶者のいるパートタイムの女性の57.3%が、一定額(130万円)を超えると配偶者の健康保険・厚生年金保険の被扶養者から外れることを理由に挙げています。週20時間以上で勤務先の社会保険に加入すると、年収にかかわらず被扶養者からは外れることになります。保険料の負担だけでなく、手取りや将来の年金額の変化も伝えたうえで、働き方を選んでもらいましょう。
■ まとめ
今回の改正は、加入の判断基準が「年収」から「労働時間」へ移ることを意味します。シフト管理や雇用契約の運用があいまいなままでは、加入漏れを招いてしまいます。2027年10月以降は企業規模要件の縮小も控えており、中小企業にとっても早めの準備が欠かせないと考えられます。
汐留社会保険労務士法人では、社会保険の適用判断や資格取得手続きから、雇用契約書・就業規則の見直し、従業員向け説明会まで、一貫してサポートしています。自社の対応に不安をお持ちのご担当者様は、ぜひ一度ご相談ください。
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