【社労士解説】2026年4月努力義務化「治療と仕事の両立支援」 ── がん・脳卒中と向き合う社員のための体制整備ガイド
「抗がん剤治療のために、通院しながら働き続けたい」。ある社員から寄せられた相談です。2026年4月、改正労働施策総合推進法に基づく「治療と就業の両立支援指針」(令和8年厚生労働省告示第28号)が施行され、企業には治療と仕事の両立支援が努力義務として課されました(出典:厚生労働省「治療と就業の両立支援指針(概要)」)。制度整備がある事業所は前年から17.7ポイント増の58.8%に上りますが、依然40%超が未対応です(出典:厚生労働省「令和4年労働安全衛生調査(実態調査)結果の概要」)。本稿では、企業が今から整えるべき体制のポイントを解説します。
2.対応が遅れる企業に共通する課題
3.企業が整備すべき体制の3本柱
4.小さく始める両立支援、中小企業の実務対応
5.まとめ
■ なぜ今「治療と仕事の両立支援」が努力義務に
高齢化や医療技術の進歩により、通院しながら働く労働者は年々増加しています。こうした流れを受け、2026年4月1日から改正労働施策総合推進法により、事業主に治療と仕事の両立支援の取り組みが努力義務として課されました。2016年策定の「事業場における治療と仕事の両立支援のためのガイドライン」を土台に、より法的根拠を持つ「指針」へと格上げされた形です(出典:厚生労働省「治療と就業の両立支援指針(概要)」)。対象となるのは、がんや脳卒中など反復・継続した治療が必要な疾病で、精神疾患も含まれます。短期間で治癒する疾病は対象外とされている点も押さえておきたいポイントです。
■ 対応が遅れる企業に共通する課題
制度整備がある事業所は58.8%まで増えたものの、多くの企業では相談窓口が明確でない、休暇・勤務制度が治療と両立できる設計になっていない、上司・同僚の理解が不足しているという課題を抱えています。実際、両立支援を進めるうえでの難しさとして「代替要員の確保」を挙げる事業所が77.2%、「上司・同僚の負担増」を挙げる事業所が51.2%に上ります(出典:厚生労働省「令和4年労働安全衛生調査(実態調査)結果の概要」)。疾病罹患後も同じ勤務先で働き続けている労働者は74.6%に上る一方、疾病を理由に退職した人も7.6%存在しており、体制の有無が就業継続を大きく左右することがうかがえます(出典:労働政策研究・研修機構「治療と仕事の両立に関する実態調査(患者WEB調査)」)。
■ 企業が整備すべき体制の3本柱
指針が求める体制づくりは、大きく3つの柱に整理できます。
① 基本方針の表明と周知
経営層が治療と仕事の両立を支援する姿勢を明確にし、就業規則や社内ポータル等で全社員に周知します。方針が明文化されていないと、現場の上司の裁量任せになり対応にばらつきが生じます。
② 相談窓口の明確化
人事担当窓口を定め、誰にどう相談すればよいかを明確にします。産業医や産業保健スタッフとの連携体制を整えておくことも重要です。
③ 休暇制度・勤務制度の整備
時間単位の年次有給休暇や傷病休暇、時差出勤・在宅勤務制度を整備し、就業規則に明記します。支援は原則として労働者本人からの申出を起点に進める点も制度設計上のポイントです。
■ 小さく始める両立支援、中小企業の実務対応
体制整備は大がかりな制度改定でなくても始められます。まずは就業規則に休暇・勤務制度の根拠を追記し、人事担当窓口を明確にするだけでも従業員の安心感は大きく変わります。特に規模の小さい企業では、休職から復職までの流れをあらかじめフローチャート化しておくと、いざというときに慌てず対応できます。汐留社会保険労務士法人では、就業規則の見直しから両立支援制度の設計まで、企業の規模に応じた実務対応を支援しています。
■ まとめ
治療と仕事の両立支援は努力義務とはいえ、優秀な人材の離職防止や健康経営の観点からも避けて通れないテーマです。人材の多様化が進むなか、病気を理由に優秀な人材を手放さない仕組みづくりは、これからの人事戦略に欠かせません。制度が整っていない企業ほど、着手の早さが差別化につながります。
汐留社会保険労務士法人では、就業規則整備や健康経営支援を通じて、治療と仕事を両立できる職場づくりをサポートしています。体制整備でお悩みの際は、ぜひお気軽にお問い合わせください。
汐留社会保険労務士法人では、労務に関するご相談から企業の実情に合わせたきめ細かな支援を行っています。「どこから手をつければよいかわからない」という段階でも、お気軽にご相談ください。
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