【社労士解説】2026年10月改正「同一労働同一賃金」── 必要となる労働条件明示書の見直しと待遇差説明義務
「うちのパートさんから待遇差の説明を求められたことなんて、一度もありません」。人事のご担当者から、よくお聞きする言葉です。実際、正社員との待遇の相違について会社に説明を求めたことがあるパートタイム・有期雇用労働者は15.1%にとどまります(出典:厚生労働省「令和3年パートタイム・有期雇用労働者総合実態調査」)。しかし2026年10月1日以降、「聞かれないから大丈夫」は通用しなくなってしまいます。本稿では、いよいよ行われるパートタイム・有期雇用労働法関係の改正について、実務対応のポイントを解説します。
2.必要となる労働条件通知書の見直し
3.家族手当・住宅手当・夏季冬季休暇に要注意
4.説明の「方法」にも気をつける
5.今から着手したい3つの実務
6.まとめ
■押さえておきたい改正の3本柱
2026年4月28日に改正省令・告示が公布され、10月1日から、①雇い入れ時の労働条件明示事項の追加、②「同一労働同一賃金ガイドライン」の改正、③雇用管理の改善等に関する措置内容の改正、という3つの見直しが施行されます(出典:厚生労働省「2026年10月からパートタイム・有期雇用のルールが変わります―3つの改正ポイント」)。
同一労働同一賃金は2020年4月から順次施行されましたが、今回はそれから5年余りを経た初の本格的な見直しです。「施行時に対応したから終わり」では済まされません。
■必要となる労働条件通知書の見直し
現在、パートタイム・有期雇用労働者を雇い入れる際には、「昇給の有無」「退職手当の有無」「賞与の有無」「雇用管理に関する相談窓口」の4項目を書面の交付等により明示する義務があります。今回の改正で、ここに「待遇の相違の内容・理由等に関する説明を求めることができる」旨が追加されます。労働契約の更新時も明示が必要です。
追加されるのは、わずかな項目です。しかしその意味は小さくありません。これまでの説明義務は「求めがあったとき」に対応する必要がある、会社にとっては受け身のものでした。今後は会社の側から、「説明を求めることができる」権利を知らせなければならないことになります。説明を求められる場面が増える前提での備えが必要です。
■家族手当・住宅手当・夏季冬季休暇に要注意
同一労働同一賃金ガイドラインの改正では、裁判例などを踏まえて、賞与・退職手当・各種手当・福利厚生の考え方が明確化されました。とりわけ点検が急がれるのが手当と休暇です。
家族手当については、相応に継続的な勤務が見込まれるパートタイム・有期雇用労働者に対し、正社員と同一の手当を支給しなければならないとされました。住宅手当についても、正社員と同一の転居を伴う配置の変更があるのであれば、同一の支給が求められます。さらに夏季冬季休暇は、正社員と同一の休暇を付与しなければならないと示されています。「正社員だけのもの」として長年運用してきた制度ほど、見直しが必要になります。
■説明の「方法」にも気をつける
今回の改正では、説明の仕方も具体化されました。待遇の相違等を説明する際には、「資料を活用し、口頭により説明する方法」または「説明すべき事項をすべて記載した分かりやすい内容の資料を交付する等の方法」のいずれかによることが必要になります。その場しのぎの口頭説明では足りない、ということです。
あわせて、賃金の決定にあたり職務の内容や成果、意欲、能力、経験などを公正に評価して昇給に反映すること、正社員等への転換制度の内容や実績を明示するよう努めることも盛り込まれました。
■今から着手したい3つの実務
まず第一に、労働条件通知書・雇用契約書の様式改定です。厚生労働省から記載例が公表されていますので、10月1日以降の雇い入れと契約更新に間に合うよう準備が必要です。
そして次に、手当・休暇の棚卸しです。正社員だけに支給・付与しているものを一覧化し、待遇差があればその理由を説明できるかどうかを確認します。
最後に、説明用資料の整備です。「なぜこの待遇差があるのか」を職務の内容・責任の程度・配置変更の範囲から説明できる資料を用意しておけば、現場の負担は少なくなりトラブルも減らす事ができます。
■まとめ
今回の改正は、待遇差そのものを禁じるものではありません。問われているのは「説明できる状態にあるか」です。説明できない待遇差は、不合理な待遇差と評価されるリスクを抱えしまうことになります。
汐留社会保険労務士法人では、就業規則・賃金規程の見直しから労働条件通知書の様式改定、待遇差の説明資料の作成支援まで、一貫してサポートしています。10月1日の施行までに自社の体制を整えておきたいというご担当者様は、ぜひ一度ご相談ください。
汐留社会保険労務士法人では、労務に関するご相談から企業の実情に合わせたきめ細かな支援を行っています。「どこから手をつければよいかわからない」という段階でも、お気軽にご相談ください。
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