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意外と知らない?有期労働契約社員の無期転換ルールについて解説!

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令和3年7月28日、「令和2年有期労働契約に関する実態調査」と「令和3年有期労働契約に関する実態調査」の調査結果が厚生労働省より公表されました。有期労働契約社員の無期転換ルールに関して、聞いたことがないと答えた方は39.9%と4割近くに上り、本制度が十分に周知されていない実情が明らかとなりました。政府は制度の見直しなどを検討しており、今後も政府の動向から目が離せません。本稿では、無期転換ルールの概要のおさらいと対策について解説します。

↓YouTube動画でも解説しています!
【YouTube】意外と浸透していない?有機労働契約社員の無期転換ルールについて

1.無期転換ルールとは?
2.対象は?
3.行うべき対策は?
4.まとめ

■無期転換ルールとは?

有期労働契約で働いている労働者は日本国内に1,560万人いるとされており(平成29年労働力調査)、そのうち3割は5年以上就業しているという実態(平成23年長期労働契約に関する実態調査報告書)があります。一方で有期労働契約には、雇止めの不安の解消や処遇の改善などが課題とされていました。これらの課題を解消する目的で、5年以上同じ法人で有期労働契約を続けている方を対象に、対象者が申込をした場合に無期労働契約への転換を義務付けたのです。


※参照「無期転換ルールのよくある質問」リーフレット(厚生労働省)

有期労働契約社員に対して会社の裁量で解雇や雇止めを断行することは、法律で一定の制限が定められています。とはいえ直近5年間で3割程度の方が、更新を希望していたが雇止めにあったとされており(令和3年有期労働契約に関する実態調査_個人調査)、安定した雇用を求める方が望んでいない離職を防ぐためにも、政府は本制度の浸透を目指しています。

■対象は?

全ての事業場が対象となります。通算された契約期間が5年を超える契約を結んだ時点で、無期転換の申込権が発生します。申込権が発生した労働者から申込があった場合、基本的に会社は無期転換を断ることができません。
無期転換ルールを定めた法律が施行した平成25年4月1日からすでに5年が経過しているため、全ての会社に該当者がいる可能性があります。自社は小さな会社だから関係ない・・・ということにはならないのでご注意ください。

なお例外も定められています。「高度専門職」と「定年後引き続き使用される有期雇用労働者等」については、無期転換ルールの適用から除外されると定められています。ただどちらの例外も、計画を作成したうえで都道府県労働局長の認定を受けることが必要です。当てはまればルール対象外、ということではない点に注意が必要です。

■行うべき対策は?

会社の方針を検討したうえで、就業規則の整備と周知をしましょう。

①就業規則を定める

有期雇用労働者が無期転換を申し込むことによって、無期労働契約という新たな就業形態の社員が発生することになりますので、就業規則等でルールを定めましょう。

・現行の就業規則を適用する場合
現行の就業規則の対象者に、無期労働契約者を新たに明記します。

・専用の規則を定める場合
退職金や賞与などの待遇を通常の正社員と同条件にしたくない場合、無期労働契約者専用の規則を新たに作成します。

・無期労働契約のパートタイマーの場合
通常の有期労働契約パートタイマーと同じ就業規則でよいのか検討し、上記同様に対策を行います。

②無期転換申込時のルールを定める

条件を満たす有期雇用労働者からの申込があった場合は、翌日から無期労働契約に変更されるのが法律の定めであり、就業規則に何も記載がなくても当然にこの定めが適用されます。会社として管理が難しいことが想定されるため、事前に社内ルールを定めておくのが有効です。無期転換申込の時期を決めたうえで、申込時には専用の書式を提出してもらうなど、会社が管理しやすいルールを定めたうえで就業規則に明記しましょう。

(例)無期転換を希望する場合は特定月(4月、10月)の1ヶ月前までに専用書式で申出をし、直後の特定月から無期転換とする、など

③定年を定める

無期労働契約者に適用される就業規則に定年制度を定めましょう。有期労働契約パートタイマー規程をそのまま適用する場合、定年制度を定めていない場合があるので注意してください。なお、定年と定めた年齢をすでに超えている方が無期転換の申し込みをした場合、無対策だと定年の制度の対象外になり得ます。通常の定年を超えた年齢でもう一つの定年を定めておくなど、別途対策が必要です。

④労働者に周知をする

無期転換ルールについて、労働者に周知する義務は課されていません。ただ、会社が説明をせずに本人が別のルートから無期転換ルールを知った場合、会社との信頼関係に影響がでる恐れがあります。今後労働者への周知が義務化される可能性もありますし、本ルールの周知活動が活発になることも考えられます。そのため特に対象者については会社から周知することをお勧めします。なお就業規則を変更した場合には当然に周知義務があるため、結果的に周知が必要になります。

■まとめ

意外と浸透が進んでいない無期転換ルールについて解説しました。まだ整備が済んでいない企業は、お早めに対策を検討してはいかがでしょうか。既に対策済みの企業についても、今後制度の見直しなども想定されるため、情報収集を続けていきましょう。

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