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人事制度とは?代表的な評価手法と導入のポイントを解説

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会社の経営資源として重要なものは「ヒト」であるとされています。その「ヒト」を育成し、会社の成長へと繋げるためには何が必要なのでしょうか。
その一つとして「人事制度」の設計が挙げられます。自社に合った人事制度を導入することで、会社と従業員が共に同じベクトルで目標に向かうことや、納得感の高い評価による離職率の低下などの効果を見込むことができます。
本稿では、人事制度の概要や手法、ポイントを解説していきます。

1.人事制度の構成要素
2・代表的な4つの評価手法
3.人事制度導入のポイント
4.まとめ

■人事制度の構成要素

人事制度は、主に次の3つの要素によって構成されます。

(1)評価制度

会社の経営理念の下、従業員の成果や行動を評価するための基準を定める制度です。評価の結果により、等級や報酬が決定されます。

(2)等級制度

評価内容に応じて従業員を序列化し、等級を決定します。等級によって求められるスキルや役割、責任は異なります。

(3)報酬制度

給与や賞与などを決定する制度です。評価・等級制度とリンクさせて、給与の上限・下限が設定されたり、賞与の支給額が決定されることが一般的です。

このように3つの要素がそれぞれ密接に関連することで、人事制度が成り立ちます。

■代表的な4つの評価手法

次に、人事評価において、効果的とされている代表的な4つの手法を解説します。

①MBO評価

Management by Objectivesの略称で、個人またはグループごとに目標設定し、それに対する達成度合いを評価する手法のことです。
導入目的によって主に3つのタイプに分類することができ、それぞれの特徴は次の通りです。

組織活性型
(ボトムアップ)
人事評価型
(ボトムアップ)
課題達成型
(トップダウン)
概要 従業員自らが目標設定し、個人の自主性を引きだす。 従業員の課題を年度目標として設定し、目標達成度と業務の評価を行う。 全社目標を部門目標に、さらにチーム目標へと細分化し、個人目標へと落とし込む。
重点 動機付け 人事評価 企業目標の達成
目標 個人目標が主体 企業目標が主体
メリット ・能力開発・人材育成が期待できる
自己管理によるマネジメントにより、従業員個人が自分で自分の仕事を管理・コントロールできる

・モチベーションの向上
自分で決めた目標に向かって努力するため、  「やらされ感」はなくなり、組織の成功に貢献するという参画意識を持つことができる

・評価がしやすい
目標を達成したかどうかが明確

デメリット ・全社目標やチーム目標を達成しづらい
目標設定を個人に任せきりにすると、組織全体のベクトルは揃わず個々の目標達成が全体目標とかけ離れたものになる可能性がある
・不公平感や不満が増す恐れがある
上位が設定した目標は、個々の意思を考慮していないため、「なぜこの目標なのか」の理解を得ないと、不満に繋がることも

②OKR

目標管理フレームワークの一つで、目標(Objectives)を主要な成果(Key Results)に落とし込んで、主要な成果を上げれば目標も達成できる仕組みのことです。
会社・チーム・個人のOKRはそれぞれが互いに共有し、リンクするように設定することで、全体として一つの目標「O」に向かっていくことができます。
目標=「O」は定性的でチームを鼓舞するようなチャレンジングなもの、シンプルで覚えやすいもの、1カ月~四半期で達成できるものを設定するとよいでしょう。
主な成果=「KR」は定量的な指標で数値で測れるもの、数は2~5個程度、60~70%の達成度で成功とし、自信度1/2程の高い目標設定がよいとされています。
近年、急成長を遂げた企業が採用しているケースも多く、認知度が上がっているOKRですが、やはりメリット・デメリットがありますので、次の表をご覧ください。

メリット デメリット
従業員エンゲージメントの向上 不向きな場合もある
全社で目標を共有しているため、企業への貢献を従業員一人ひとりが実感しやすい。 定期的に目標を設定・共有・振り返りをすることが必要になるため、社員が複数の業務を兼任している場合や業務が多忙な場合は向いていない。
迅速な展開 定着するまでに時間がかかる
目標サイクルが1ヶ月~四半期と短いため、フレキシブルな調整・変更が可能。 仕組みの理解・習慣の変更が必要。新しいツールを導入するケースもあり、定着に時間や工数がかかる。
大胆な目標設定が可能 モチベーションが下がる
高めの目標を設定することが前提。個人やチームとしてもチャレンジングな目標を立てることができる。 高い目標にチャレンジできることはメリットである一方、人によってはモチベーションが下がる可能性もある。
目標設定の時間を節約 人事評価と結びつけにくい
O(目標)はシンプルなので、設定に時間がかからない。上の階層の目標をもとにするため、ゼロから考える必要はない。 未達に終わることが前提となっているため、人事評価と結びつけることが難しい。
定性的なO(Object)はその達成度が抽象的なため、評価者と被評価者とで温度感の違いがでることも。
目標の明確化による生産性向上
目標が明確化されることで、社員は優先順位をつけて効率よく仕事を進めることができるようになる。

 

③360度評価

評価対象者の上司だけではなく、仕事上関わりのある同僚・部下も人事評価を行います。
感情による評価エラーを避け、公平性や客観性を実現できるため、評価結果に納得しやすくなることや、多方面からのフィードバックにより、自らの強み・弱みなどの特性を把握することができることが特徴です。

④1on1

上司と部下が1対1の面談を行う制度です。
従来の「評価面談」は半年や1年ごとに業務内容の確認、評価のフィードバック、今後の目標設定の話し合いの場でした。一方、1on1は成績やスキルなどを直接的に評価する場ではなく、部下を中心とした面談によって、上司が部下の現状を把握し、部下の成長を促していくことが目的です。
面談は1回約30分~1時間程度とし、週1回、月1回などの短期間で定期的に行うことが重要です。話し合いのテーマは、緊急性はないけれど、上司に伝えたいことを中心にする場合が多いです。例えば、業務の悩みや組織への改善要望点を伝えたり、プライベートの相談などでもよいでしょう。
従来の「評価面談」のように堅苦しいものではなく、自由な対話を通して部下の成長を促していくため、上司の傾聴力や質問スキル、やる気を引き出す承認スキルが必要になってきます。上司には事前に研修を行い、制度の趣旨や必要なスキルを把握してもらうことで、より高い効果を生み出すことができるでしょう。

360度評価や1on1では集まる情報が多くなりますので、システムを活用するなどして、適正な情報管理ができるように工夫をしましょう。

■人事制度導入のポイント

代表的な手法について解説しましたが、制度導入にあたっては手法を一つに絞る必要はありません。それぞれに特徴がありますので、上手く組み合わせることで、より効果を生み出すケースが多くあります。
例えば、MBOを取り入れたものの、上司が部下のことをよく理解しておらず、少ない情報から感覚的な評価をしたとします。すると、部下は正当に評価されていないことに不満を抱き、会社や上司に対しての信頼が低下するでしょう。従業員の納得感を高めるために導入したはずの人事制度によって、従業員のモチベーション低下や退職に繋がっては逆効果です。
このようなケースでは、ベースはMBOのままとして、360度評価や1on1を組み合わせることで解決できるかもしれません。多方面からの情報・高頻度で定期的に集めた情報を評価に活用することで、公平で納得感の高い評価へと繋げることが可能となるでしょう。

■まとめ

人事制度の設計にマニュアルはありません。どの手法を取り入れ、また組み合わせたら良いかは会社によって異なりますし、他社での成功事例をそのまま取り入れても上手くいくとは限りません。
会社の方向性や人事制度導入の目的を明確にしたうえで、従業員の納得する制度設計をしていきましょう。弊社では、現状分析から導入、その後の運用サポートまで豊富な実績をもとにサービスを提供しております。人事制度に課題を感じている場合は弊社にお問い合わせください。
汐留社会保険労務士法人 人事制度設計コンサルティング

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