押さえておきたい「男性の育児休業制度」と「活用できる助成金」のポイント ~2025年度「育児・介護休業法」の改正内容を踏まえて~

厚生労働省の調査によると、2023年度の男性の育児休業取得率は30.1%となり、2022年度の17.1%から13ポイントと大きく増加、初めて30%を超えました。女性の育児休業対応は経験したことがある企業も、男性から育児休業の申出があった場合に備えておく必要があります。男性の育児休業取得者が今後も増えていくと想定される中で、企業としてはどのような対応をすべきでしょうか。本稿では、男性の育児休業について会社として対応すべき事項、活用できる助成金、2025年度の「育児・介護休業法」改正内容を、ポイントを押さえて解説します。
1.男性の育児休業制度
2.育児休業取得の申請から復職までの流れ
3.男性の育児休業で活用できる助成金
4.2025年度の「育児・介護休業法」改正内容
5.まとめ
■男性育児休業制度
男性が利用できる育児休業制度は、「出生時育児休業(産後パパ育休)」と「育児休業」の2種類があります。
◇出生時育児休業(産後パパ育休)
原則として、子の出生後8週間以内に4週間(28日)までの休業が取得できる制度です。
2回まで分割して取得することが可能で、後述する育児休業とは別に取得することができます。
産後の配偶者を短期間かつ複数回サポートする場合は、出生時育児休業との併用が考えられます。
取得の申し出をする場合は、原則2週間前までに行います。
◇育児休業
原則、子が1歳になるまで取得することができ、出生時育児休業(産後パパ育休)と同様に2回までの分割取得が認められます。また、子が保育園へ入園できない等、やむを得ない事由がある場合には、最長で子が2歳になるまで休業を延長できます。取得の申し出は原則1か月前までに行います。
◇出生時育児休業(産後パパ育休)と育児休業の比較
出生時育児休業(産後パパ育休) | 育児休業 | |
対象者 | 主に男性社員 | 男性、女性問わず |
休業期間 | 原則、出生後8週間以内のうち、 4週間(28日) |
原則、子が1歳になるまで ※最大2歳になるまで延長可能 |
申出期限 | 原則、2週間前 | 原則、1ヶ月後 |
分割取得回数 | 2回まで分割取得が可能 | 2回まで分割取得が可能 |
休業中の就業 | 労使協定締結により可能 | 原則不可 |
休業給付 | 休業開始時賃金日額×休業日数×67% | 休業開始時賃金日額×休業日数×67% ※181日目以降、50% |
その他、育児休業取得時の申請方法や、育児休業の申出の撤回や日程変更の方法、育児休業中の給与の取扱い等、事前に定めるべきルール・運用は会社によって異なります。申出があったタイミングであわてることの無いよう、今回の法改正を機に就業規則の見直しと検討、整備をおすすめいたします。
また、就業規則を整備することで、後述する助成金の要件に合致する可能性もありますので、是非、専門家である社会保険労務士にご相談ください。
■育児休業取得の申出から復職までの流れ
ここでは、男性従業員から育児休業の申出があってから復職までのスケジュールを確認していきます。
上記が一連の流れになります。詳しく見ていきましょう。
◇育児休業の申出があった場合
男性従業員から育児休業の申出があった場合は、主に以下の点についてご案内すると同時に、実際に取得することとなる休業の詳細について確認を行ってください。また並行して、業務の引継対応についても調整できるよう確認が必要です。
- 育児休業期間の確認
- 育児休業時の給与の取扱い
- 社会保険料の取扱い
- 住民税の取扱い
- 育児休業給付金制度のご案内
- 復職するときの申出方法と時期
◇給付金の手続き
育児休業中は、雇用保険から「出生時育児休業給付金」または「育児休業給付金」が支給されますので、事前に受給要件を確認し、当人に周知をしておくことも重要です。この給付金の手続きは会社が行うものですので、早めの準備が必要です。
◇復職時の対応
復職の申出が男性従業員からあった際には、当人に復職後の業務内容や勤務形態の希望を聞き、場合によっては『時短勤務』や『テレワーク』などの柔軟な働き方を提示してください。
■男性育児休業で活用できる助成金
男性の育児休業取得者が出た場合、申請できる助成金の1つに「両立支援等助成金」の「出生時両立支援コース」があります。こちらを受給できる可能性がありますので、要件に合致しているかどうかを確認して、検討をしましょう
支給額や要件については<厚生労働省 2025(令和7)年度 両立支援等助成金のご案内>を参照ください。
■2025年度の「育児・介護休業法」改正内容
2025年(令和7年)は、4月と10月に「育児・介護休業法」が改正される予定です。いずれも、少子化対策の一環として「仕事と育児・介護を両立できる環境」を整備することを目的としています。
育児休業に関する改正内容は次の通りです。改正内容には、事業主が対応すべき義務がありますので、会社としての準備が必要です。
◇2025年4月改正の主な項目
- 子の看護休暇の見直し
- 所定外労働の制限(残業免除)の対象拡大
- 育児休業取得状況の公表義務適用拡大
◇2025年10月改正の主な項目
- 柔軟な働き方を実現するための措置等
- 仕事と育児の両立に関する個別の意向聴取・配慮
詳細は<厚生労働省のリンク先>もご参照ください。
■まとめ
これまでも育児休業制度は度々改正されており、それに伴い給付金・助成金の制度も変更されています。会社が「仕事と育児の両立を支援する環境」を整えることや、男性従業員が安心して育児休業を取得できるための準備をおこなうことで、人材の確保・定着がしやすくなり、企業の魅力も向上します。一方、それらの対応には専門的な知識が必要となるため、法的に問題のない対応には社会保険労務士に伴走してもらうことも必要です。
汐留社会保険労務士法人は、仕事と育児の両立を目指す皆様のお力になれることを、切に願っております。
男性育児休業の取得に必要な環境整備や給付金・助成金の申請、2025年度の「育児・介護休業法」の改正内容に興味がございましたら、お気軽にお問い合わせください。
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