【社労士解説】2026年4月義務化「女性管理職比率の公表」 ── 中小企業が女性活躍を本気で進めるための人事制度づくり
「うちは女性が少ないから、管理職もなかなか……」
人事担当者からよく聞くこの言葉の裏に、女性が「管理職になりたい」と思えない職場環境の問題が隠れているかもしれません。2026年4月1日、改正女性活躍推進法が施行され、従業員101人以上のすべての企業に「女性管理職比率」と「男女間賃金差異」の公表が義務化されました。厚生労働省の調査では、日本の女性管理職比率は依然として約13%にとどまっています(出典:厚生労働省「令和6年度雇用均等基本調査」)。本稿では、情報公表義務の実務対応から、女性が活躍できる人事制度づくりのポイントまでを解説します。
2.「女性管理職比率公表」で何が可視化されるのか
3.女性管理職が増えない本当の理由
4.人事制度で変えられる3つのポイント
5.えるぼし認定・くるみん認定と合わせた戦略
6.まとめ
■ 2026年4月から何が変わったのか
2026年4月1日施行の改正女性活躍推進法により、常時雇用する労働者が101人以上のすべての企業に対して、次の2項目の公表が義務化されました。
① 女性管理職比率(管理職に占める女性の割合)
② 男女間賃金差異(全労働者・正規雇用・非正規雇用の3区分)
これまで301人以上の企業のみが対象でしたが、今回の改正で中小企業にも一気に広がりました。公表先は厚生労働省が運営する「女性の活躍推進企業データベース」が原則で、事業年度終了後おおむね3ヶ月以内が公表の目安とされています。まだ対応が完了していない企業は、早急に確認が必要です。
■ 「女性管理職比率公表」で何が可視化されるのか
情報公表義務が課されることで、これまで「なんとなく女性管理職が少ない」という感覚でしか捉えられていなかった課題が、数字として社内外に開示されます。
厚生労働省「令和6年度雇用均等基本調査」によると、女性管理職比率の全国平均は約13%にとどまっています(出典:厚生労働省「令和6年度雇用均等基本調査」)。政府は「2020年代の可能な限り早期に30%程度」を目標に掲げていますが、現状との乖離は大きく、取組みの遅れが数字として浮き彫りになっています。
公表した数値は求職者や投資家にも参照されます。特に若い世代は、働く環境のジェンダー平等を企業選びの基準にするケースが増えており、女性活躍推進の遅れは採用競争力にも直結します。「開示すれば終わり」ではなく、開示した数字の改善が問われる時代になっています。
■ 女性管理職が増えない本当の理由
では、なぜ女性管理職はなかなか増えないのでしょうか。「女性が管理職を希望しない」という見方がされることもありますが、それだけではありません。
様々な統計調査で、「管理職になりたい」という意向がある女性は男性よりも少ないことが示されています。しかし、その背景にあるのは「育児との両立が難しい」「女性管理職のロールモデルが見えない」「評価基準が不透明で男性より昇進が遅れやすい」という構造的な課題です。
つまり、「女性が望まない」のではなく、「女性が望めない環境が続いてきた」というのが正確な見方です。制度の問題を個人の意識の問題に帰着させず、人事制度そのものを見直すことが解決への近道です。
■ 人事制度で変えられる3つのポイント
人事担当者がまず着手すべき人事制度の見直しポイントを3つ紹介します。
① 等級・評価制度における昇進要件の点検
管理職への昇格要件として「転勤可能」「長時間労働が前提」「連続した在籍年数」などが暗黙の条件になっていないかを確認しましょう。育児・介護期間中の評価ダウンや、短時間勤務者の昇格対象外なども見直しの対象です。「フルタイムで長く働けること」を前提とした制度設計が、結果として女性の昇進を阻んでいるケースは少なくありません。
② ロールモデルの「見える化」とキャリア面談の充実
女性社員が「自分もあのポジションに就けるかもしれない」と思えるよう、管理職になった女性社員のキャリアパスを社内広報や面談の場で積極的に共有することが効果的です。また、年1回以上のキャリア面談を設け、本人の意向とキャリアビジョンを丁寧に確認する仕組みを整えましょう。上司の側に、部下のキャリア支援スキルを高めるための研修を実施することも有効です。
③ 育児・介護との両立を前提にした管理職モデルの設計
「管理職=長時間労働」という固定観念を崩すために、フレックスタイムやリモートワークの活用、業務の権限移譲の範囲を見直し、育児中でも管理職として機能できる体制を整えることが求められます。管理職の働き方モデルそのものを変えることが、女性にとっての「管理職のハードル」を下げることにつながります。
■ えるぼし認定・くるみん認定と合わせた戦略
女性活躍推進の取組みを対外的に証明するには、「えるぼし認定」や「くるみん認定」の取得が効果的です。
えるぼし認定は、採用・継続就業・労働時間等・管理職比率・多様なキャリアコースという5つの基準に基づき、厚生労働大臣が女性活躍推進を認定する制度です。取得企業には公共調達での加点措置があり、対外的な信頼性向上にもつながります。くるみん認定(子育てサポート企業)と組み合わせることで、「育てやすく、活躍できる職場」という一貫したメッセージを社外に発信できます。
取得には行動計画の策定・届出から始まりますが、基準達成のプロセス自体が人事制度の点検・整備の機会ともなります。今回の情報公表義務化を機に、認定取得を目指す企業が増えています。
■ まとめ
2026年4月施行の改正女性活躍推進法によって、女性管理職比率の公表は101人以上の企業に広く義務化されました。しかし、数字を開示するだけでは十分ではありません。その数字を改善するために、等級・評価制度の見直し、ロールモデルの見える化、育児との両立を前提とした管理職モデルの整備が求められます。
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