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骨太の方針2025から読み取る!最低賃金引き上げの動向とは?

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骨太の方針2025(正式名称「経済財政運営と改革の基本方針2025」)は、2025年6月13日に政府が閣議決定した政策文書です。この方針は、日本の中長期的な経済・財政政策の方向性を示すもので、具体的な目標や施策が明記されています。背景には、低成長を克服し持続可能な経済基盤を築き上げることが求められる国内経済の現状があります。近年の物価上昇や少子高齢化による労働力不足が深刻化する中、成長型経済への転換が喫緊の課題となっています。特に今回の方針では、最低賃金の引き上げや中小企業支援、医療・介護分野の処遇改善といった具体策が重視されています。本稿では、決定されたこちらの骨太の方針2025から、採用確保や定着で中小企業にとって重要なポイントとなる最低賃金引き上げの動向を解説します。

1.政府が掲げた成長型経済の柱
2.経済政策としての意義
3.最低賃金引き上げの方向性
4.労働市場への影響と多様な働き方の推進
5.まとめ

■政府が掲げた成長型経済の柱

骨太の方針2025では、「賃上げこそが成長戦略の要」というコンセプトが大きな柱として掲げられています。この中で注目されるのが、物価上昇率を1%程度上回る賃金上昇を定着させることや、最低賃金の全国平均を引き上げる目標です。特に2020年代には「地域別最低賃金を全国平均1,500円以上へ引き上げる」という具体的な方針が示されています。

また、成長型経済の実現においては、労働者のリスキリングや副業・兼業の促進、多様な働き方の推進が重要な要素とされています。これにより、個人の所得向上だけでなく、社会全体の生産性向上を図り、長期的に名目GDPを成長させる狙いがあります。

■経済政策としての意義

骨太の方針2025は、日本の経済と社会を持続的に発展させるための重要な指標を示しています。その中で、最低賃金引き上げの目標は、賃金格差の是正や消費の活性化といった経済効果を生む期待が込められています。最低賃金の全国的な底上げは、都道府県間の経済格差を縮小させるだけでなく、労働市場の健全な成長にも寄与すると考えられます。

さらに、中小企業への生産性向上支援や、価格転嫁や取引適正化といった施策は、経済基盤の強靭化を目指す取り組みの一環です。これにより、企業にとっても安定的な事業展開が実現しやすくなります。また、政府が掲げる「賃上げの新たな社会通念を定着させる」という方針は、日本の労使関係や働き方改革の新たなステージを示しています。

■最低賃金引き上げの方向性

①最低賃金の目標金額

骨太の方針2025では、全国の最低賃金を大きく引き上げる方針が明確にされています。具体的な目標として、物価上昇を1%程度上回る賃金上昇を定着させながら、2020年代には全国平均で最低賃金を1,500円とする目標を目指すとされています。この方針の実現には、政府、企業、労働者の連携が求められ、特に中小企業も含めた実効的な施策の推進が欠かせない状況です。

②最低賃金引き上げの実現性

現在、地域別最低賃金の全国平均は1,055円のため、2025年~2029年の5年のうちに445円(1年につき89円)の引上げが必要となります。
もし仮に、今年から89円の引上げとなった場合、全国平均は1,144円となるほか
・全ての都道府県で地域別最低賃金が1,000円を超える
・一番高い東京は、1,252円
・一番低い秋田は、1,040円(2021年度の東京が1,041円)
となります。
今年の引上げ額はまだ公表されていませんが、昨年の51円引上げよりも引上げ幅が大きくなる可能性もあるかもしれません。

③中小企業への影響と支援策

最低賃金の引き上げは、中小企業や小規模事業者にとって経営に直接的な影響を与えます。特に地方の中小企業では、人件費の増加が収益圧迫につながるリスクがあります。そのため、骨太の方針2025では、価格転嫁の適正化や生産性向上を支える施策が掲げられています。また、事業承継やM&Aの促進、地域特化型の人材育成支援など、包括的な経済対策が提案されています。これらの支援策による中小企業の負担軽減が賃金引き上げの実現の鍵となります。

■労働市場への影響と多様な働き方の推進

最低賃金の引き上げは、労働市場にも大きな影響を与えます。特に、最低賃金水準をクリアしなければならない企業では、生産性向上や雇用形態の見直しが求められるでしょう。その一方で、政府が「骨太の方針2025」の中で推進している多様な働き方の促進にもつながると考えられます。リスキリング、副業・兼業の推進など、個々の働き手がより柔軟で多様なキャリアプランを選択できる環境整備も進められています。こうした取り組みは、労働市場の効率化や人材活用の向上を後押しすると期待されています。

■まとめ

骨太の方針2025では最低賃金の引き上げの方針が示されていますが、その実現にはさまざまな課題があります。特に、中小企業や小規模事業者への影響が懸念されています。最低賃金を引き上げることは、労働者の生活向上や消費活性化につながる一方で、人件費の増加が事業運営の重荷となり、結果的に経営の悪化や雇用機会の減少を引き起こす可能性があります。
骨太の方針2025が目指す長期的な成長戦略を達成するためには、最低賃金が「社会全体の成長を底上げする仕組み」として機能することが条件です。
汐留社会保険労務士法人では、最低賃金引き上げ等の長期的な成長戦略に対応するために、多様な働き方の促進、人材活用の向上を高めるための戦略検討や施策実行、助成金の活用を総合的にサポートしております。
最低賃金引き上げによる影響や採用、教育育成等に課題がございましたら、ぜひお気軽にお問い合わせください。
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