介護離職ゼロへ!企業・従業員が知っておきたい介護両立支援制度のポイント
あらゆる世代で介護に直面するリスクが高まり、介護離職はもう他人事ではありません。
2025年4月の法改正では、介護離職の防止のために介護と仕事の両立支援制度の認知度向上を目的とした制度が始まりました。本稿では介護離職防止の重要性、介護両立支援制度の概要、そして介護に直面した場合の実務支援ツールまで、わかりやすくご紹介します。
1.増加する介護離職
2.介護離職防止と両立支援の重要性
3.介護離職防止のために-2025年度の主な強化ポイント-
4.厚生労働省の実務支援ツールを活用しよう
5.民間企業のサービス例(ウェルビオBiz Lightのご紹介)
6.社会保険労務士法人ができる実務サポート
7.まとめ:誰もが「辞めなくていい」社会の実現へ
■増加する介護離職
人生100年時代と言われる現代において、企業にとっても働く個人にとっても、仕事と介護の両立はますます大きな課題となっています。かつては「親の介護で退職」は特別な事情と考えられていましたが、親、配偶者、子等への介護が必要な従業員が増加し続け、今や“介護離職”は誰にとっても現実的なリスクとなり、働く人やその家族、そして企業にとって重大な課題となっています。
■介護離職防止と両立支援の重要性
介護離職とは、働きながら家族の介護を続けることが困難になり、職場を離れざるを得ない状況を指します。
従業員は離職によって一時的な生活の安定は得られるかもしれませんが、その先には、次のような代償が考えられます。
- 経済的不安(継続的な収入の喪失)
- 社会的孤立(仕事仲間とのつながりの消失)
- キャリア中断や再就職困難
一方、企業側にも次のようなリスクがあります。
- 働き盛り・中堅世代の人材流出による生産性・知識継承の損失
- 従業員の健康悪化や働き方改革の遅れ
- CSR(企業の社会的責任)の対応
こうした事態を防ぐには介護と仕事の両立支援が重要であり、「介護離職ゼロ」「辞めなくていい環境づくり」が推進されています。
■介護離職防止のために-2025年度の主な強化ポイント-
介護離職防止を強化するため行われた、2025年度法改正の主なポイントはこちらです。
①介護両立支援制度
「介護休業(最長93日)」や「介護休暇(年間5~10日)」に加え、要介護状態の家族を抱える従業員がテレワークを選択できるよう、企業に努力義務が課されました。
②介護に直面する前の早期情報提供・個別制度周知や意向確認の義務化
「制度の存在自体知らなかった」「どこに何を相談すれば良いか分からない」という声も多い中、2025年改正後は、企業が両立支援制度の具体的内容や利用手順、相談窓口・担当者を明示し、介護に直面した従業員に個別周知することが義務となりました。
また、介護に直面する前の早い段階で介護に関する準備やイメージを持っていただくために、具体的には従業員が40歳になるタイミングで上記のような内容を情報提供することも義務となっています。
③両立支援等助成金制度
政府の「両立支援等助成金」の一つである「介護離職防止支援コース」は、介護と仕事の両立を支援する企業向けの制度です。2025年度にこの助成金も改正され、業務代替支援を行う場合の助成が追加されました。
■厚生労働省の実務支援ツールを活用しよう
厚生労働省は「企業による社員の仕事と介護の両立支援に向けた実務的な支援ツール」をHPで公開しています。これは、仕事と介護の両立に取り組む全ての企業経営者や人事担当者、従業員向けに作成されたものです。
具体的に介護課題のある従業員が、ご家族やケアマネージャー等にどのような事項を相談するべきか等のチェックリストも分かりやすくまとまっています。
また、同じく厚生労働省のHPでは「仕事と介護の両立支援 ~両立に向けての具体的ツール~」として、次のものを掲載しています。
- 動画教材
- 仕事と育児/仕事と介護の両立支援ガイド(企業向け)
- 「介護支援プラン」策定マニュアル(企業向け)
- 仕事と介護 両立のポイント・事例(労働者向け)
これらのツールは、厚生労働省のHPから無料で入手可能です。これらを適切に活用することで、制度導入から運用までスムーズに対応する事ができます。
■民間企業のサービス例(SOMPOグループ「ウェルビオBiz light」のご紹介)
民間企業でも仕事と介護の両立を支援するサービスが提供されています。その一例として、SOMPOグループが提供する「ウェルビオBiz Light」をご紹介します。
【「ウェルビオBiz Light」の概要】
「ウェルビオBiz Light」は、従業員の仕事と介護の両立を支援するための中小企業向けサービスです。経済産業省の「仕事と介護の両立支援に関する経営者向けガイドライン」や「育児・介護休業法の改正」等の内容にも対応したパッケージ型のサービスで、各企業での取組みを後押します。
◎情報提供(PDF)
介護に関する基礎情報を従業員へ発信するためのPDFコンテンツを提供
◎実態調査アンケート
現在そして近い将来において「介護」が、会社・従業員に与える影響等を調査
◎セミナー
仕事と介護の両立支援に関するオンラインセミナーを開催
◎動画コンテンツ
介護に関する基礎知識や備えをクイックに学べる5分程度のショート動画コンテンツ
◎オンラインコミュニティ
将来の介護への不安を抱えている方や介護と仕事の両立をしている方のための企業横断
コミュニティ
◎個別相談窓口
看護師や介護支援専門員などの専門性の高い相談員がオンラインで個別相談
■社会保険労務士ができる実務サポート
制度を形だけで終わらせず、“実際に使ってもらえる・迷わず申請できる”状態にするには、専門的な知見が欠かせません。
社会保険労務士法人は、就業規則や社内規程の整備、制度導入から運用フロー設計、従業員・管理職向けの説明会や研修、助成金申請、トラブル対応、復職支援、カウンセリングなど、制度が「使われる」体制づくりを一貫してサポートします。制度設計だけでなく、「使いやすい・相談しやすい」仕組み作りと継続的改善に力を発揮します。
■まとめ:誰もが「辞めなくていい」社会の実現へ
介護離職ゼロ――。それは、一人ひとりがキャリアや生活を諦めず、企業が大切な人材を守り、社会全体が持続可能な未来を目指す合言葉です。2025年に介護離職防止のための義務が強化されたのは、誰にでもやさしい社会を目指す第一歩。企業・従業員・専門家が手を取り合い、現場で実効性ある両立支援を進めて参りましょう。
ご不明点やお困り事は、ぜひ汐留社会保険労務士法人までお問い合わせください(お問い合わせフォーム)。
これからも最新情報をお届けし、皆さまの安心につながるご提案を続けてまいります。