【社労士解説】最低賃金1,500円達成は「2030年代前半」に後ろ倒しへ ── 骨太の方針2026(原案)から読む労働時間制度改革の行方
「賃上げはもう限界です。でも人手は増やせない」
中小企業の経営者からこうした声を耳にする機会が増えています。令和8年6月30日、経済財政諮問会議に「骨太の方針2026(原案)」が示され、最低賃金1,500円目標の達成時期や、裁量労働制・変形労働時間制の見直し方針が盛り込まれました(出典:内閣府「経済財政運営と改革の基本方針2026(原案)」)。本稿では、人事担当者が押さえておくべきポイントを解説します。
2.実質賃金年1%上昇という新たな「賃上げのノルム」
3.労働時間法制、2026年夏以降に本格議論へ
4.36協定・勤務間インターバル制度等の実務対応
5.まとめ
■ 最低賃金1,500円目標、「2020年代」から「2030年代前半」へ
骨太方針2025では最低賃金は「2020年代に全国平均1,500円」という目標が掲げられていましたが、2026年原案では「労働生産性の継続的な向上を図ることで、遅くとも2030年代前半できる限り早期に」達成するとの表現に変わりました(出典:内閣府「経済財政運営と改革の基本方針2026(原案)」)。目標時期が実質的に後ろ倒しされた形で、急激な引き上げ圧力はやや緩和される可能性がありますが、中央最低賃金審議会・地方最低賃金審議会での毎年の審議は今後も続くため、油断はできません。
■ 実質賃金年1%上昇という新たな「賃上げのノルム」
原案では、2029年度までに物価上昇を年1%程度上回る賃金上昇を「賃上げのノルム(社会通念)」として定着させる方針が明記されました。単なる分配ではなく人材確保のための「供給力強化」と位置付けられており、賃金制度・等級制度の設計においても、単年度対応ではなく中期的な賃上げ計画を前提とした見直しが求められます。
■ 労働時間法制、2026年夏以降に本格議論へ
原案は、裁量労働制について「濫用防止措置を前提に対象の在り方を見直す」とし、変形労働時間制についても「他律的要因への対応や予見可能性の確保」を論点に挙げています。これらは令和8年夏以降、労働政策審議会で具体的な検討が始まる予定です(出典:内閣府「経済財政運営と改革の基本方針2026(原案)」)。裁量労働制を導入している企業は、対象業務の範囲や健康確保措置の運用実態を今のうちに点検しておくとよいでしょう。
■ 36協定・勤務間インターバル制度等の実務対応
連続勤務規制や勤務間インターバル制度の法的位置付け、「つながらない権利」、副業・兼業時の健康確保、テレワーク活用促進なども検討テーマに挙がっています。あわせて、労働基準監督署による36協定の相談支援や指導の運用見直しも進められる方針です。就業規則・36協定の届出内容が実態と合っているか、今から確認しておくことが重要です。
■ まとめ
最低賃金の目標時期変更や労働時間法制の見直しは、今後の政策論議次第で内容が変わり得るテーマです。だからこそ、自社の賃金制度・労働時間制度が「今の実態」に即しているかを点検し、変化に対応できる体制を整えておくことが欠かせません。
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