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意外な落とし穴も?テレワーク交通費や在宅勤務手当における定時決定や随時改定の注意点

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2021年3月25日にテレワークガイドラインが改定され、公表されました。使用者が適切な労務管理をするための留意すべき点や、望ましい取組等が示されています。4月1日には「標準報酬月額の定時決定及び随時改定の事務取扱いに関する事例集」の一部が改正され、テレワークにおける交通費や在宅勤務手当について定時決定や随時改定手続きでの取扱い事例が追加されています。本稿では、テレワークガイドラインで示されている費用負担の取扱いを踏まえ、交通費や在宅勤務手当を支払う場合における社会保険手続きへの影響、対応方法を解説します。

なお、改定後のテレワークガイドラインについて、安全衛生の注意点は過去のコラムやYouTubeで解説をしております。
テレワークガイドライン改定案に見る、テレワークでの安全衛生のポイント
【YouTube】テレワークガイドラインについて

1.テレワークにおける費用負担はどうするべきか
2.一時的に出社する場合の交通費
3.在宅勤務手当の取扱い
4.まとめ

■テレワークにおける費用負担はどうするべきか

テレワークガイドラインでは、費用負担についても望ましい取組が示されており、テレワークを行うことによって労働者に過度の負担が生じることは望ましくないとされています。必ずしも会社がテレワークにかかる費用をすべて負担しなければならないということではありませんが、従業員に負担をさせる場合は十分に話し合いの上、就業規則等で規定しましょう。労使のどちらがどのように負担するか、また、会社が負担する場合における限度額、従業員が会社に費用を請求する場合の請求方法等は検討すべき事項です。実際にテレワークにかかる費用以上を負担すると給与として課税されることになりますので、テレワークの実態を踏まえて合理的・客観的に計算し、支給しましょう。なお、費用負担等に関する課税関係については、国税庁の資料で基準が示されています。
在宅勤務に係る費用負担等に関するFAQ(源泉所得税関係)(令和3年1月15日)

■一時的に出社する場合の交通費

テレワークにより出社する必要がなくなることから、交通費は定期代支給から実費精算に変更している会社も多いかと思います。テレワーク中に一時的に支払った交通費がどのような取扱いになるのかは、実態に応じて次の取扱いとなります。なお、定期代支給を廃止し実費清算とする等、交通費支給方法を変更する場合は随時改定の対象となりますので注意しましょう。

①労働契約上、勤務場所が自宅であった場合
もともと在宅勤務で、業務命令により一時的に出社し、その交通費を会社が負担した場合は実費弁償と認められます。その場合は社会保険上の「報酬等」には含まれず、定時決定や随時改定の手続きでは報酬総額に算入する必要はありません。

②労働契約上、勤務場所が事業所であった場合
もともと出社する予定である場合に、会社が負担した交通費は原則として「報酬等」に含まれます。そのため、定時決定や随時改定の手続きでは報酬総額に算入しなければなりません。

■在宅勤務手当の取扱い

テレワーク導入により在宅勤務手当を支給する会社も多いですが、在宅勤務手当も定時決定や随時改定にも影響があります。取扱い事例は次の通りです。

1.そもそも在宅勤務手当は「報酬等」に含まれるのか


①労働の対象として支払われる場合
在宅勤務時に、必要な費用として使用しなくても支払われ、毎月5,000円など渡し切りで定額を支給する場合は、労働の対象として支払われているとみなされ、「報酬等」に含まれます。定時決定や随時改定の手続きでは報酬総額に算入します。

②実費弁償として支払われる場合
パソコン購入や通信費用等、実費分に対応すると認められる場合は、「報酬等」には含まれません。定時決定や随時改定の手続きでは報酬総額に算入する必要はありません。具体的な例は事例集本文もご参照ください。
「標準報酬月額の定時決定及び随時改定の事務取扱いに 関する事例集」の一部改正について

2.在宅勤務手当が支給される場合の随時改定の取扱い


①今まで支給していた通勤手当等を廃止し、新たに実費弁償に当たらない在宅勤務手当の支払いが開始された場合
固定的賃金の廃止と追加が同時に行われることになりますので、固定的賃金の総額の増減により判断をします。つまり固定的賃金の総額が増額していれば増額改定、減額していれば減額改定として、標準報酬月額の大幅な変動があれば随時改定の手続きをします。

②変動的な在宅勤務手当が新たに支給され、変動的な手当の廃止が同時に発生した場合
支払っていた往復交通費日額を廃止し、在宅勤務手当として日額の手当を新たに支払う場合などが該当します。増減が明確に確認できない場合、起算月から3ヶ月間の平均が増額したか減額したかで判断し、随時改定の手続きを行います。

③1つの在宅勤務手当に実費弁償とそうでない部分がある場合
実費弁償に当たらない部分は前述の通り「報酬等」に含まれます。ただし実費弁償分が変動することにより実費弁償以外の在宅勤務手当が変動したとしても、その変動だけでは固定的賃金の変動には該当せず、随時改定の対象にはなりません。

■まとめ

テレワークのおける費用負担の考え方と、交通費や在宅勤務手当の定時決定や随時改定への影響をみてきました。費用負担のルールも検討する必要がありますが、新しく交通費や手当のルールを変更した場合、社会保険手続きにも影響がありますので、誤った処理にならないように注意しましょう。テレワーク導入における各種規程の作成・変更については弊社でも承っておりますので、お気軽にご相談ください。

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