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モンスター社員を生まない職場づくりとは?~問題社員への対応と予防策を社労士が解説~

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「何度注意しても遅刻を繰り返す」
「業務指示に従わず、反抗的な態度をとる」
「他の社員へのハラスメント行為が絶えない」

そんな「問題社員」の存在に、頭を抱える企業は少なくありません。
問題社員を放置すれば、職場の士気や生産性が下がるだけでなく、優秀な社員の離職を招くリスクもあります。とはいえ、感情的に解雇などの厳しい処分を行えば、不当解雇として訴訟に発展するおそれもあるでしょう。
本コラムでは、社会保険労務士の視点から、問題社員の具体的なタイプ、法的に適切な対応手順、さらには問題社員を生まないための予防策まで詳しく解説します。

1.

1. 問題社員とは?会社が直面する4つのタイプ
2. 会社が取るべき対応ステップ
3. 問題社員を「生まない」ための予防策
4. 社労士に相談するメリット
5. まとめ

■問題社員とは?会社が直面する4つのタイプ

まずは、「問題社員」の定義と、企業が実際に直面しやすい具体的なタイプについて整理しましょう。

問題社員の定義

「問題社員」という言葉は法律で定められた用語ではありません。
しかし実際の現場では、能力不足や問題行動などにより、会社に悪影響を与える社員のことを広くこのように呼ぶことがあります。
たとえば、著しく能力が不足しているにもかかわらず改善する様子がない。業務指示に従わず反論を繰り返す。正当な指導にも「それはハラスメントだ」と反発する。あるいは、セクハラやパワハラで職場の雰囲気を悪化させたり、会社の備品や金銭を持ち出すといった明確な問題行動に及ぶケースも見られます。
こうした社員を放置すれば、管理職が対応に疲れ果ててしまうだけでなく、真面目に働く優秀な社員が職場から去ってしまうことにもなりかねません。そうなれば、企業全体の生産性やエンゲージメントが大きく損なわれることになるでしょう。

問題社員の4つのタイプ

問題社員は、その行動傾向から大きく4つに分類できます。

能力不足型
業務遂行に必要なスキルや知識が不足しているにもかかわらず、自身の課題を認識せず、改善の姿勢も見られないタイプです。
結果として、周囲の社員が恒常的なサポートを求められ、チーム全体の生産性低下を引き起こすことにもなりかねません。

②ハラスメント型
パワーハラスメント(パワハラ)、セクシュアルハラスメント(セクハラ)、マタニティハラスメント(マタハラ)など、他者への攻撃的な言動を繰り返すタイプです。
被害を受けた社員のメンタルヘルス不調や離職を招くだけでなく、企業の「安全配慮義務違反」が問われるリスクも高く、早期かつ慎重な対応が求められます。

③規律違反型
就業規則や職場のルールに反する行動を繰り返すタイプです。
具体的には、次のような行動をとる社員のことを言います。
・ 遅刻、早退、無断欠勤を繰り返す
・ 業務上の正当な指示に従わない
・ 経歴を詐称して入社する
・ 会社の備品や金品を横領・窃盗する
・ SNSなどで会社を誹謗中傷する
いずれも放置すれば職場秩序が損なわれるだけでなく、企業イメージの低下や法的リスクにもつながりかねません。

④モンスター型
問題社員の中でも特に影響が大きく、対応困難なケースを指し、「モンスター社員」とも呼ばれます。
正当な注意指導に対して「パワハラだ」と執拗に主張したり、会社を攻撃する目的でクレームを繰り返したりするなど、過剰な権利意識で周囲を巻き込み問題を複雑化させる傾向があります。

■会社が取るべき対応ステップ

問題社員への対応で最も重要なのは、冷静に適切なプロセスを踏むことです。感情的な対応や手続きを省略した安易な解雇は、後に「解雇権の濫用(労働契約法第16条)」と判断され、深刻な紛争を引き起こすリスクがあります。
解雇はあくまで最終手段と捉え、以下のステップを慎重に進めることが重要です。


①事実関係の確認と記録

憶測や伝聞に頼らず、客観的な事実を正確に把握し、証拠として記録することが、対応の第一歩となります。

問題行動の記録
遅刻や指示違反などの問題行動があるたびに、日時、場所、具体的な内容、注意指導の内容などを書面で記録します。
「改善指導シート」などを作成し、会社の対応履歴を時系列で蓄積していくことが、後の法的手続きにおいて極めて重要です。

人事考課記録の活用
人事考課の面談記録も重要な証拠となり得ます。「問題点を指摘したにもかかわらず改善が見られない」といった事実を具体的に記録しましょう。

ハラスメント事案の調査
ハラスメント相談には、プライバシーに配慮しつつ迅速かつ正確な事実確認が必要です。被害者・目撃者へのヒアリング、客観的証拠の確認などを行います。


②改善のための指導・教育

事実確認と並行して、本人に改善機会を提供します。
「会社が改善のチャンスを与えたか」は、懲戒処分や解雇の有効性を判断するための重要な要素です。

注意指導
最も基本的で重要な対応です。口頭での注意に留まらず「注意指導書」や「警告書」といった書面を交付し、どの点を改善すべきかを明確に伝えましょう。これは、会社が改善を促す努力を尽くしたことの証拠にもなります。

教育・研修
業務スキル不足が原因であれば、必要な研修やOJTを実施しましょう。ハラスメント加害者には、ハラスメント防止研修を再度受講させるなどの対応が考えられます。

配置転換
現在の職場環境や人間関係が問題の一因であると考えられる場合、本人の適性を考慮した上で配置転換を行うことも有効です。ただし、不当な目的での配転は権利濫用とみなされる可能性があるため注意しましょう。


③懲戒処分・退職勧奨

度重なる指導にもかかわらず改善が見られない、あるいは問題行動が悪質である場合には、より踏み込んだ対応を検討します。

懲戒処分
懲戒処分を適切に行うためには、事前の準備と正しい手続きが不可欠です。
まず、就業規則に懲戒の種類と事由を明記しておく必要があります。その規定に基づき、けん責・戒告(始末書の提出を求める)、減給、出勤停止、降格といった処分を段階的に行います。
処分を下す際に特に重要なのが、本人に弁明の機会を与え、意見や言い分を十分に聴取することです。この手続きを欠くと、懲戒処分が相当性を欠く、あるいは権利濫用として無効と判断される可能性があるので注意しましょう。

退職勧奨
会社から社員に対して、自主的な退職を促します。
一方的な解雇ではなく「自主退職」という選択肢を提示することで、円満な解決を図れる可能性が高まります。退職勧奨はあくまで「提案」であり、退職届の強要や執拗な説得は「退職強要」として違法行為となるため注意が必要です。

解雇
解雇は、労働者にとって最も重い処分であり、「客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合」は無効となります。
解雇を選択する際は、それまでの指導記録や改善の機会提供の履歴など、解雇がやむを得ないことを示す十分な客観的証拠を揃えることが必要です。


■問題社員を「生まない」ための予防策

問題が起きてから対応するのではなく、そもそも問題社員を発生させないための予防的な取り組みが、健全な組織づくりには欠かせません。
ここでは、企業が実践できる具体的な予防策を紹介します。

経営トップによる方針表明と周知啓発

経営トップが自ら「期待する社員像」や「守るべき行動規範」を明確に示し、継続的にメッセージを発信することは、問題行動を未然に防ぐ上で非常に重要です。
具体的には、以下のような方針を明確化し、全従業員に周知・啓発しましょう。

・会社が求める価値観や行動基準
・ハラスメントなど許されない行為
・風通しの良い職場づくりへの取り組み

社内報やポスター、朝礼などを活用し、継続的に発信することで、
組織全体の規範意識が醸成されます。

就業規則・服務規律の整備

従業員が守るべき行動基準を就業規則に明確に定めておくことは、問題行動を未然に防ぐための基本です。
具体的には、以下の事項を明記します。

・遵守すべき服務規律(勤務態度、業務遂行上のルールなど)
・禁止行為(ハラスメント、情報漏洩、無断欠勤など)
・違反時の懲戒処分の種類と基準

ルールを明確にすることで、従業員は何が求められているかを理解でき、万が一問題が生じた際には、会社が適切に対処する根拠にもなります。

納得感のある人事評価制度で不満やモラル低下を防ぐ

「頑張っても頑張らなくても評価が変わらない環境」では、真面目な社員のやる気が削がれ、不満を抱いた社員の問題行動が加速するリスクがあります。
評価項目や基準を事前に全従業員に公開し、評価結果は必ず本人との面談を通じてフィードバックするなど、公平性と透明性を担保することが重要です。

適切な研修の実施

研修は、知識のインプットだけでなく、組織としての価値観を浸透させる機会でもあります。特に、次のような研修を定期的に実行することが有効です。

・ハラスメント防止研修
・コミュニケーション研修
・コンプライアンス研修
・管理職向けの指導法(コーチング・フィードバック)研修

研修は、正社員だけでなくパート、アルバイト、派遣社員など、すべての労働者を対象として実施することで、職場全体のリテラシー向上につながります。

風通しの良い職場づくり

ハラスメントやトラブルの背景には、職場内のコミュニケーション不足が潜んでいることも少なくありません。
日常的に話せる環境があるだけで、誤解や不満の早期解消につながるため、結果的に問題社員の発生リスクが下がります。
たとえば、以下のような取り組みが有効です。

・上司と部下の1on1ミーティング
・チーム内の雑談タイム、軽い意見交換の場づくり
・フィードバックの文化を育てる取り組み

相談体制の整備

職場の問題を早期に把握し、深刻化する前に対処するためには、従業員が気軽に相談できる窓口の設置が重要です。
相談窓口では、人間関係の悩み、業務上の困りごと、ハラスメントと思われる行為、同僚の問題行動など、幅広い内容を受け付けます。
相談窓口は、社内に担当者を置くだけでなく、プライバシー保護の観点から外部の専門機関に委託することも有効です。
問題が深刻化する前から広く相談を受け付けることで、早期発見・早期対応が可能になります。

採用スクリーニングで“問題社員予備軍”を見極める

問題社員の多くは、採用の段階で兆候があったというケースも少なくありません。だからこそ、そもそも「入社させない」ことが最大の予防策になります。
採用時は、応募者の表面的な印象だけで判断せず、客観的情報をもとに慎重に見極めることが重要です。
以下は、採用時に取り入れたいチェックの例です。

・提出書類の内容と面接での受け答えの整合性チェック
・前職の職務内容・退職理由に関する深掘り面接
・リファレンスチェック
・採用適性検査の活用

■社労士に相談するメリット

問題社員への対応は、法的リスクと実務のバランスを取りながら慎重に進める必要があるため、社内だけで対応するには限界があります。
こうした場面で頼りになるのが、労働・社会保険分野の専門家である社会保険労務士(社労士)です。
社労士に相談する主なメリットは以下の通りです。


就業規則や制度整備を通じた「予防」の支援

社労士は、就業規則や服務規律、懲戒規定などの整備を通じて、問題社員の発生を未然に防ぐ職場づくりをサポートできます。
また、人事評価制度やハラスメント防止体制、採用プロセスの見直し(適性検査の活用など)にも対応可能です。

労務トラブルを防ぐための実践的なアドバイス

社労士は、「労務管理に関する相談・指導」を通じて、トラブルを予防するための具体的な対応策をアドバイスすることができます。

法的に適切な対応の土台づくりができる

社労士は、労働基準法や労働契約法などに基づき、企業が行う懲戒処分や雇用管理が法的に妥当な手続きで行われているかをチェック・助言します。
ただし、訴訟対応や相手方との交渉は社労士の業務範囲外となるため、紛争に発展した場合は弁護士との連携が必要です。

書類整備や記録対応を通じて、証拠を残せる

社労士は、企業内で行った注意・指導・研修・配置転換などの対応が、後に法的根拠として通用するような証拠に整備されているかをチェックし、必要に応じて書面の作成支援を行います。

人事担当者の負担軽減

複雑な事実調査、指導書や警告書といった書面の作成、本人との面談の補助など、実務上のサポートを通じて、経営者や人事担当者の時間的・精神的な負担を軽減します。


■まとめ

問題社員への対応は、放置すれば職場全体に悪影響が広がり、性急に対応すれば法的紛争を招きます。感情に流されず、客観的証拠に基づいた法的手続きを着実に踏むことが重要です。
より本質的な解決策は、問題社員を「生まない」職場環境の構築です。明確なルール、公平な評価、円滑なコミュニケーション。これらが揃えば、問題行動は起こりにくくなります。

汐留社会保険労務士法人では、問題社員への対応から、就業規則の整備、人事評価制度の構築、ハラスメント防止研修まで、企業の健全な発展をトータルでサポートいたします。お気軽にご相談ください。

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